弘法大師とは、平安初期の僧の空海のことをいう。空海は、真言宗の開祖。遍照金剛(へんじょうこんごう)ともよばれ、俗に「お大師さま」の呼び名でしたしまれている。天台宗の開祖の最澄とともに平安仏教を代表する僧であり、三密とよばれる行を実践して大日如来と一体化することで現世での成仏をめざす即身成仏が可能であるとの教えを説いた。
空海は、経典の研究ばかりをおこない人々の救済をおこたっていた奈良仏教を批判し、即身成仏思想を強調した。また、「十住心論」でしめした人間の心や菩提(ぼだい)心の展開をまとめた思想は、日本仏教全体に深い影響をあたえた。空海が遍歴したといわれる各地には弘法大師信仰が生まれ、弘法清水、大師の杖立(つえたて)柳などがのこっている。四国八十八カ所の巡礼も、この大師信仰から生まれたものである。