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壺坂霊験記 大和の壺坂寺のほとり土佐町に住む座頭の沢市は、琴や三味線の稽古をしながら美しい妻のお里が、まめまめしく洗濯や賃仕事をしてくれるのを頼りに、細々と暮らしています。沢市は夫婦になって三年、お里が朝方になると寝床を抜け出していくのに対し、「自分が盲目ゆえに外に男でも・・・・」と疑いを持ちます。夫の疑いを知ったお里は驚きます。 そこでほうそうから盲目となった夫のために壺坂寺の観音様に祈願を続けてきた真心を打ち明けました。 沢市は不自由なひがみから、貞節な妻を疑ったことを詫び、お里の奨めに従い壺坂寺にお参りすることになりました。壺坂寺はその昔、桓武天皇の眼病が時の住職の祈祷によって平癒したという、西国六番の札所です。沢市は本堂に着き、夜もすがら御詠歌をあげ、三日間ここに籠もり断食すると決心します。 しかし、お里が帰った後、沢市は、どうせ望みは叶うまい、死ぬのが妻への返礼と、谷に身をおどらせました。山に戻ったお里は、夫の姿が見えないので狂乱したように駆け回り探したあげく、谷底に夫の死体を見付けます。そして、形見の杖を抱きしめて、沢市の後を追い自分も谷底へ飛び込みます。 谷底に並んで伏した夫婦の前に観音様が現れ、お里の貞節と日頃の信仰心によって寿命を延ばすとのお告げがあり、 二人は生き返ったばかりか沢市の目も見えるようになりました。喜び勇んだ夫婦は、 万歳を舞ってお礼参りをするのでした。 |
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